鋼種 シリコロイB2Silicolloy B2 シリコロイB2は化学成分のひとつにSi(ケイ素)を多量に含有する高ケイ素ステンレスです。 シリコロイB2は二相ステンレス(オーステナイト・フェライト)で、オーステナイト系ステンレスよりも高強度で、SUS316同等以上の耐食性を有します。 またオーステナイト系ステンレスの課題である耐応力腐食割れ性、耐焼付き性に優れ、さらには耐高温酸化性を兼ね備えています。 化学成分の一例 物理的性質の一例 機械的性質の一例 顕微鏡組織の一例 シリコロイBの諸特 シリコロイの耐食性の一例 孔食電位および塩水噴霧試験 耐高温腐食性 各種工業薬品に対する耐食性 1.化学成分の一例 (wt%) table.1 鋼種名 組織 C Si Mn Cu Ni Cr Mo Co Fe 特殊元素 シリコロイB2 A+F 0.02 3.90 1.9 1.5 8.7 18.9 1.3 Bal. 組織 A:オーステナイト F:フェライト 上記は化学成分の一例ですので、ご参考程度にお考え下さい。 2.物理的性質の一例 table.2 鋼種名 熱処理 引張強さ N/mm2 耐力 N/mm2 伸び % 絞り % 硬度 HV シリコロイB2 固溶化熱処理 800 500 45.0 83.0 260 上記は丸棒材の機械的性質の一例ですので、ご参考程度にお考え下さい(形状、熱処理、鍛錬比、清浄度等によって変動する可能性があります)。 3.機械的性質の一例 table.3 鋼種名 密度 g/cm3 熱伝導率 W/mK 平均熱膨張係数 ×10-6(1/℃) 縦弾性係数 GPa ポアソン比 比透磁率 μ シリコロイB2 7.66 20.5 20~100℃ 14.5 20~400℃ 14.5 20~500℃ 14.5 199 – 3.17 弱磁性 4. 顕微鏡組織の一例 シリコロイB2(×200) Photo 1顕微鏡組織(200倍) 5. シリコロイBの諸特性 Fig.1硬度と孔食電位の関係 Fig.2耐応力腐食割れ性42%MgCl2沸騰中定荷重引張試験 Fig.3応力繰り返し速度:1750回/min Fig.4鈴木式摩擦試験機による摩耗抵抗の試験結果*シリコロイB1:シリコロイB2の改良前の鋼種*主成分:0.02C-3.5Si-2Mn-16Cr-6Ni-1Mo-1.5Cu 6. シリコロイの耐食性の一例 シリコロイB2は耐食性に優れた鋼種です。計測数値詳細は、以下の耐食性比較表をご確認ください。 耐食性比較表 Fig.55.0%-HCl (boiling) Fig.65.0%-H2SO4 (boiling) Fig.7海水 (boiling,pH7.9) Fig.810%FeCl3-6H2 O (40℃,pH1.5) Fig.988%-Cl飽和硫酸溶液(60℃) Fig.1097.6%-Cl飽和硫酸溶液(60℃) Fig.1198%-HNO3 (50℃) Fig.1265%-HNO3 (boiling) Fig.13NaOH(苛性ソーダ)腐食試験シリコロイB2,NaOH(10~50%,boiling,6hour) Fig.14耐硫酸性 7. シリコロイの耐食性の一例 table.4 材質 孔食電位( mV) アノード分極 (A/mm2) 塩水噴霧試験 3.5%NaCl( 30℃) 5.0%H2SO4 (30℃) 5.0%NaCl( 30℃,96hr) 不動態化電流密度 不動態化保持電流密度 シリコロイB2 330 0.4 0.03 発錆なし SUS304L 320 8.6 0.04 発錆なし 8. 耐高温腐食性 table.5 材質 V-attack試験 酸化試験 PbO腐食試験 重量減少(g/dm2) 重量増(g/m2) 重量減少(mg/cm2) シリコロイB2 119 27 501 SUS310S 147 41 807 ステライトNo6 128 77 93 V-attack試験:80%V2O5+10%NaCl+10%Na2SO4合成灰中、800℃×16hour、全浸漬試験 酸化試験:大気中で1100℃×16時間連続加熱 PbO腐食試験:PbO中で920℃×3時間、全浸漬試験 9. 各種工業薬品に対する耐食性 table.6 No 薬品名 条件 PbO腐食試験 濃度 (%) 温度 (℃) SL-B1 SL-B2 SUS 304L SUS 316L 01 アセトン 全 RT A A A A 02 アルコール 全 RT A A A A 03 アンモニア 乾 RT A A A A 04 アンモニア 湿 RT A A A A 05 安息香酸 全 100 A A A A 06 亜硫酸 飽和 200 C C D C 07 亜硫酸ガス 乾 – B B B B 08 亜硫酸ガス 湿 500 C C D C 09 亜硫酸ナトリウム 50 BP A A A A 10 塩素(乾) 20 – C B D C 11 塩素(湿) 20 – D C D C 12 塩酸 全 IT E D E D 13 塩化アルミニウム 5 RT B A C A 14 塩化アンチモン 5 RT B A C A 15 塩化アンモニウム 5 BP B A C A 16 塩化カルシウム 飽和 BP B A C A 17 塩化カリウム 飽和 100 C C C C 18 塩化ナトリウム 飽和 100 B A B A 19 塩化マグネシウム 30 RT A A A A 20 塩化第二鉄 5 RT E D E D 21 エーテル – RT A A A A 22 苛性ソーダ 30 BP B A B A 23 過酸化水素 30 RT A A A A 24 ギ酸 100 BP C C C C 25 クローム酸 50 RT C C C C 26 クエン酸 50 BP C B E B 27 酢酸 50 BP A A A A 28 酢酸 80 BP B B B B 29 酢酸 100 BP B A B A 30 酢酸+ギ酸 25,60 BP C B C B 31 酸素 – >538 A A A A 32 酸素 – <538 A A A A 33 硝酸 65 BP C B C B 34 硝酸アンモニウム 飽和 BP A A A A 35 硝酸ナトリウム 100 溶融 A A A A 36 四塩化炭素 乾燥 BP A A A A 37 脂肪酸 粗 231 B A B A 38 シュウ酸 10 BP D C E C 39 次亜塩素酸ソーダ 10 BP B A C A 40 水酸化カルシウム 飽和 20 A A A A 41 水酸化バリウム 濃濃 BP A A A A 42 炭酸ガス 乾 700 A A A A 43 炭酸アンモニウム 飽和 100 A A A A 44 炭酸カリウム 飽和 BP A A A A 45 炭酸ナトリウム 飽和 BP A A A A 46 タンニン 50 BP A A A A 47 チオ硫酸ソーダ 25 BP A A A A 48 乳酸 濃 BP C B E C 49 フッ化アルミニウム 5 20 C C C C 50 ベンゼン 純 BP A A A A 51 無水酢酸 – RT A A A A 52 硫酸アンモニウム 飽和 RT A A A A 53 硫酸アルミニウム 飽和 BP D C D C 54 硫酸銅 50 100 A A A A 55 硫酸ナトリウム 飽和 BP A A A A 56 硫化水素ガス <400 C C C C 57 硫酸+三酸化クロム 45,飽和 60 E D E D 58 硫酸+硫酸ソーダ 10,飽和 60 D C D C 59 クロムみょうばん 10〜飽和 BP E E E E 60 ヨウ化カリ 20 BP A A A A 61 リン酸 60 BP B A C B 62 リン酸ナトリウム – BP A A A A 63 硫酸 30 20 B A D B 64 硫酸 80~100 20 B A C A A:完全に使用に適している (腐食を無視できる) B:使用に適している (腐食度:0.79mm/Year以下) C:使用してもよい (腐食度:1.58mm/Year以下) D:使用に制限がある(腐食度:1.58mm/Year以上) E:使用できない RT:室温 BP:沸点 IT:室温-沸点 SL:シリコロイ 関連情報 高温特性 酸化増量 ヒートチェック特性-1 耐食性比較表 関連事例 関連事例はありません。 関連Q&A シリコロイの種類は? 加工性は? 磁性はありますか? シリコロイにはどのような形状がありますか? 関連タグ SUS, シリコロイ, シリコロイB2, ステンレス, 二相, 材質, 特殊鋼, 耐食性, 腐食性 ページランキング 硬度換算表 SUS440C SUS630 SUS316L SUS420J2